AIは「魔法」ではない。しかし「武器」である。(前半)~GPTを使いこなす“問いの設計力”~

AIと書かれた剣が、魔法の杖の中央を断ち切っている様子(前半)

目次

「魔法」に見えてしまうAI──しかし“設計力”がないと動かない道具です

AIがあれば、もう全部自動化できる──そう、あなたは期待していませんか?
生成AI、特にChatGPTの登場は、私たちに「魔法」のような未来を予感させました。業務効率化の救世主として、さまざまな「スキマ業務」をAIに任せられるのではないか、と多くの企業が期待を抱いたことでしょう。

●例えば、こんな“経験”はありませんか?

 ・会議の発言録をまとめて要点を資料に反映する作業(なかなか手間がかかる。)
 ・新商品の特徴を紹介するブログ記事を書く(なかなか筆が進まない。)
 ・営業報告書に「来週の見通し」を書く(毎回言語化するのが、気が重い。)
 ・お客さまからの問い合わせの一次的な対応(毎回ほぼ同じ対応なんだよね。)

これらはすべて「すぐ終わるけど、正直めんどう」「誰かに任せられたら楽なのに」と感じる小さな手間が溢れています。しかし、これらは会社の中で「なくてもいい」仕事ではないのです。

そんな業務をAIが自動でこなしてくれるなら、こんなに素晴らしいことはありません。
「ChatGPTを使えば、要点整理も文章作成も一瞬でできる」と聞けば、確かに夢のようですよね。

● ところが、いざ使ってみると……

 ・出てきた答えがふわっとしていて使えなかった
 ・社内独自の用語が通じず、何度も修正が必要だった
 ・毎回やってほしいことをプロンプトにするのが負担になった
 ・結局、自分で修正する手間がかかり、かえって時間がかかる

こんな“あるある”に直面し、「やっぱり使えないな」「うちの会社には合わない」と感じてしまう方も少なくありません。でもこれは、AIの性能の問題ではないんです。

例えば、どんなに高性能な電動ドライバーを使っても、ネジの締め方や場所が分からなければ何もできません。しかし、私たち人間が「何を、どうしたいのか」を明確にし、適切な手順を踏んで正しく使うことができれば、驚くほど簡単に作業を補助してくれる道具になります。

AIも同じです。実際には、“問いの設計”が曖昧で「こういう答えを出して」と伝える方法が少しズレていた──それだけのことが多いのです。

● 具体的な例で考えてみましょう。

 ・目的:展示会でブースに立ち寄ってくれたお客さまへ、お礼メールを送る
 ・利用ツール:生成AI

(良い例)
指示文(プロンプト):
「先日開催された○○展示会で弊社ブースに立ち寄ってくださったお客さまへのお礼メールを作成してください。
 ・BtoB企業で、製造業向けの業務効率化ソリューションを提供しています。
 ・丁寧でビジネスライクなトーンで、展示会の御礼と資料送付の案内、お問い合わせへの対応が可能である旨を含めてください。
 ・件名と本文で提案してください。

出力文:
件名:○○展示会ご来場のお礼
〇〇株式会社 〇〇様
平素より大変お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日は、○○展示会において弊社ブースへお立ち寄りいただき、誠にありがとうございました。
当日は、弊社の製造業向け業務効率化ソリューションに関心をお寄せいただき、貴重なお時間をいただけましたこと、心より感謝申し上げます。
ご希望の方に当日配布資料のPDF版をご提供しておりますので、ご入用の際はお気軽にお申し付けください。
また、製品やサービスについてご不明点やご質問等ございましたら、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。


(良くない例)
指示文(プロンプト):
展示会後に送るお礼メールを書いて。
出力文:
件名:展示会ありがとうございました
展示会に来ていただきありがとうございました。
何かあれば連絡ください。
今後ともよろしくお願いします。

比較表

比較項目良いプロンプト良くないプロンプト
内容の具体性会社の業種、対象、目的、トーンが明確指示があいまい
出力結果の品質丁寧・ビジネスライク・配慮あり簡素・抽象的・印象に残らない
読者に響くか相手への感謝、案内、次のアクションを明確に提示表面的なお礼で関係構築につながらない

生成AIは、与えられた情報と目的を基に、よりパーソナライズされたメールのたたき台を作成してくれます。このように、「誰に、何を、どう伝えたいのか」「どのような目的で、どのようなアウトプットがほしいのか」を明確にすることで、期待する結果を出す可能性が高まります。

多くの企業がAI導入に失敗する最大の理由は、この“問いの設計力”が不足していることにあります。AIは万能な「魔法」ではなく、使い方次第で無限の可能性を秘めた「道具」なのです。

また、こういった“ピンポイント業務”からGPT導入を始めるケースが世の中では増えています。なぜなら、試行錯誤のスピードが早く、成果が目に見えやすく、「これは使える!」という実感につながるからです。

小さな業務からで構いません。まずは、あなたがAIに「何を、どうしてほしいのか」を具体的に言語化し、“問いを設計”するところから始めてみてください。AI導入の本質は、まさに「業務構造の言語化」と「問いの出し方」にあるのです。

「魔法」と見えてしまうAI(生成AI編)──要点整理表

項目内容概要
期待「全部自動化できるのでは?」という幻想(特にスキマ業務)
期待とのギャップ出力が抽象的、用語が通じない、使いこなすのが面倒
原因AIの性能ではなく“設計”が曖昧だったこと
AIの本質的な使い方「道具」として“設計”が必要(例:電動ドライバーのたとえ)

【次回の記事もぜひお読みください】
本記事では、AIを「道具」として使いこなすための“問いの設計力”に焦点を当てました。 企業にとってAIとはどのような「武器」になり得るのでしょうか?そして、それを最大限に活用するために、どのような「使える状態」を“設計”すれば良いのでしょうか?

次回の記事では、AIを「思考の補助装置」としての「武器」と捉え、企業がAIを導入すべき理由、そしてAIを「使える状態」にするための業務設計の重要性について、さらに深掘りして解説します。ぜひお楽しみに。

次回:AIは「魔法」ではない。しかし「武器」である。(後半)~企業がAIを導入すべき理由~

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