ビジネス成長の鍵!BPOとアウトソーシングの違いを徹底分析

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企業が事業を効率的に運営し、成長を目指すうえで、自社のリソースをどのように活用するかは重要な課題です。近年、その有力な手段として注目を集めているのがBPO(Business Process Outsourcing)とアウトソーシングです。この両者は似ているようで、実は役割や効果が異なります。本コラムでは、BPOとアウトソーシングの基本的な概念から具体的な違い、さらに導入を検討する際の基準やメリット・デメリットまで総合的に解説します。

1:BPOは「戦略的パートナー」、アウトソーシングは「業務の外注」

●アウトソーシングとは
BPOとアウトソーシングの違いを理解するために、まずは比較的なじみのあるアウトソーシングの基本から見ていきましょう。アウトソーシングが日本で広まったのは1990年代。企業はコスト効率の良い企業運営を模索するようになり、同時にIT技術が急激に進化したことから、アウトソーシングが普及しました。

アウトソーシングは、企業が特定の業務や機能を外部に委託することを指します。BPOとの大きな違いは、「企業全体の業務プロセスを包括的に委託する」のではなく、「限定的に必要な部分だけを委託する」というケースが一般的です。

アウトソーシングの主な活用事例には、以下のような業務があります。
・ITサービス:システム開発、ネットワークやサーバーの保守・運用、セキュリティ対策など
・製造:部品製造の一部工程を外部の専門業者に委託するOEMや、特定製品の組み立てなど
・物流:倉庫管理、配送手配、在庫管理などのロジスティクス業務

アウトソーシングの場合、短期的・スポット的に活用し、自社コストを削減する手段として使われることが多いです。「特定の業務を効率化する」ことに主眼が置かれているからです。

●BPOとは
BPOとは、企業が自社のビジネスプロセス全体を外部に委託し、さらに業務改善やプロセス再設計など戦略的な支援まで含める形態を指します。特徴的なのは「単なる下請け」ではなく、外部の専門家・専門企業とパートナーシップを組み、長期的な視点で業務プロセスそのものを最適化していく点です。

代表的なBPOの業務には、以下のようなものがあります。
●人事・労務管理:採用活動の一部から給与計算、社会保険手続きまで幅広くカバー
●会計・経理:請求書発行、経費管理、帳簿・決算対応、財務分析など
●カスタマーサポート:コールセンター業務や顧客対応、クレーム処理などの顧客接点サポート
●ITサービス:IT業務でも、企業のビジネスプロセス全体の最適化を含む場合はBPOと捉えます。例えば、クラウド型システムの導入・運用管理、AI・自動化システムの導入支援、企業全体のITインフラの最適化などは、BPOに位置付けることができます。

BPOの特徴的なメリットとして、企業がコア業務にリソースを集中させながら、専門家による高度なノウハウやスキルを活かしてビジネスプロセスそのものを革新できる点です。特に近年では、人事・会計などの管理部門だけでなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)の視点からマーケティングやITシステム運用までを含む総合的なBPOが増えています。

2:実はこんなに違う、BPOとアウトソーシングの違いを徹底比較

BPOとアウトソーシングの違いを、「業務範囲」「役割」「コスト構造」の点から見ていきましょう。

1)業務範囲の違い
●BPO:企業のビジネスプロセスを一括で委託し、戦略面や業務プロセスの最適化まで踏み込む
●アウトソーシング:特定の業務だけを切り出して外部委託し、自社はコア領域に集中する

先ほどの「ITサービスにおけるBPOとアウトソーシングの違い」のように、他の業務でも以下のような違いがあります。

例)人事業務の外部委託におけるBPOとアウトソーシングの違い
〈BPO〉
給与計算、採用、研修、評価、福利厚生など人事業務全体を外部パートナーに委託。委託先は単なる業務代行ではなく、より効果的な採用プロセスの提案や、従業員満足度を向上させる福利厚生の最適化なども支援。人材データを活用して、経営戦略と連動した人事施策の立案にも関与。
➡ 人事部門の業務プロセス全体を戦略的に最適化するため、BPOに該当。

〈アウトソーシング〉
給与計算業務のみを外部の専門企業に委託。毎月の勤怠データを社内で集計し、それを外部企業に送付。外部企業は給与計算を行い、給与明細を発行する業務を担当。
➡ 特定業務(給与計算)だけを委託しているため、アウトソーシングに該当。

BPOが“包括的”な委託であるのに対して、アウトソーシングは“限定的”な外部委託となります。

2)戦略的な役割の違い
●BPO:外部パートナーと共同で最適なプロセス設計を行い、経営戦略の根幹に関わる
●アウトソーシング:特定業務の効率化やコスト削減がメインで、経営戦略への関わりは限定的

BPOでは、長期的な視点で「企業の価値創造をどう高めるか」がテーマとなります。一方、アウトソーシングは、必要な時に必要な工程のみを任せることが多いため、企業の経営全体への影響度合いはBPOほど強くありません。

例)IT活用強化を外部委託する場合の「BPOとアウトソーシングの役割の違い」
〈BPOの役割は〉

A社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、業務のデジタル化を進めたいと考えていました。しかし、ITの専門人材が不足しているため、業務プロセス全体を見直し、クラウドシステムの導入・運用までをBPO企業に任せることに。BPOパートナーは、単なるITサポートではなく、業務の効率化やデータ活用の提案も行い、企業の成長を支援。
➡ 単なるサポート業務ではなく、経営戦略の一環として活用するためBPO導入例。

〈アウトソーシングの役割は〉
B社は、社員がITに詳しくないため、社内のパソコン設定やネットワーク管理を外部のIT企業に依頼。日常的なトラブル対応や、セキュリティ更新などのITサポート業務だけをアウトソーシングし、業務効率化に成功。
➡ 戦略的なIT活用というより、業務の維持・安定を目的としたアウトソーシング導入例。

3)コスト構造の違い
●BPO:初期投資や導入コストが発生する場合もあるが、業務プロセスの改革による中長期的なコスト削減が期待できる
●アウトソーシング:スポット的・部分的な委託であるため、導入のハードルは低い。ただし、全社的なコスト削減効果はBPOほど大きくならないケースもある

例)カスタマーサポート業務を外部委託する場合の「BPOとアウトソーシングのコスト構造の違い」
〈BPOのコスト構造〉

A社は、EC事業の成長に向け、顧客対応の強化が必要に。単なるコールセンター業務ではなく、顧客データの分析を行い、マーケティング施策の改善まで含めて支援してくれるBPO企業に委託。結果として、カスタマーサポートの品質向上だけでなく、リピート率の向上や売上拡大にもつながっている。
➡ コスト削減だけでなく、売上向上や企業成長につながるBPO導入例。

〈アウトソーシングのコスト構造〉
B社は、ECサイトを運営しているが、問い合わせ対応に手が回らず、カスタマーサポートのコールセンター業務だけを外部の委託会社に依頼。繁忙期だけ増員することもでき、変動費としてコストを調整しやすいメリットもあった。
➡ 必要な業務を必要な期間だけ依頼することで、コストを最適化できるアウトソーシング導入例。

特に中小企業の場合には、まずはアウトソーシングで必要最小限のコスト削減を実現し、事業規模が拡大した段階でBPOによる包括的な業務効率化を目指す、といった段階的アプローチも効果的です。

3:BPO導入のメリット・デメリットと、その課題を解決するフォリウムのBPAサービス

ここまでご紹介したBPOとアウトソーシングの比較内容から、「自社はやはりアウトソーシングよりもBPOで抜本的な経営改善を実行したい」と考える企業担当者の方もおられると思います。しかし、BPOの導入には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も伴います。あらためてBPOのメリットと、考慮すべきポイントを見ていきましょう。

●BPOのメリット
1:業務効率化と生産性向上

BPOではプロセス全体を見直すため、無駄や重複を取り除きやすく、生産性が飛躍的にアップしやすいメリットを持ちます。BPOを提供する専門企業は、業界のベストプラクティスを活用し、より効率的な業務フローを設計するため、企業ごとの属人的な業務を削減し、作業のムラやミスを防ぐことができます。AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した業務自動化が進めば、ルーチンワークの削減と同時に、より戦略的な業務にリソースを集中できるようになります。

2:コスト削減
自社で専門家や設備をそろえる必要がないため、固定費の軽減につながります。特に、固定費が大きくなりがちな人事、経理、IT運用、カスタマーサポートといった業務では、BPOを活用することで変動費化できるため、財務負担を柔軟にコントロールしやすくなります。BPOの導入では間接コストの削減も期待できます。業務の最適化やプロセスの自動化により、不要な作業や手戻りを削減し、業務のスピードと精度を向上させます。その結果、企業は限られた予算をより戦略的な分野へ投資し、成長を加速させることができます。

3:専門性の活用
カスタマーサポートや経理・会計、人事業務など、各分野のプロによる高品質なサービスが受けられるため、迅速な問題解決や高度な分析が期待できます。例えば、税務や労務管理の分野では、法改正や規制変更に迅速に対応する必要がありますが、BPO企業はそのような変化を常に把握し、適切な対応を提供できます。また、データ分析やAIを活用したBPOサービスを利用することで、単なる業務処理の効率化にとどまらず、業務改善の提案を受けることも可能です。こうした専門的な知見を活かすことで、企業は競争力のある経営を実現できるようになります。

●BPOのデメリット
1:コミュニケーションの難しさ
外部パートナーとの情報共有や意思決定プロセスが複雑化し、担当者間の連携が滞るリスクがあります。例えば、優先度や進め方のズレです。企業側は「迅速な対応」を重視していても、BPO企業側では「正確性」に重点を置き、意思決定や業務処理に時間がかかるケースも考えられます。情報共有のタイミングや手段も考慮すべきで、特に、リアルタイムでの対応が求められる業務(カスタマーサポート、財務管理など)では、情報のやり取りがスムーズでないと、クライアントや取引先に影響を及ぼす可能性があります。

2:依存度の増加
ノウハウが外部に蓄積されるため、自社での知見が不足してしまう可能性があります。長期間にわたってBPOを利用すると、自社内で業務を遂行できる人材やスキルが育たず、将来的にBPO企業なしでは業務が回らなくなるリスクが生じます。委託先の契約条件の変更などで別のBPO企業へ切り替える場合でも、ノウハウが自社に蓄積されていないとスムーズな移行が難しくなる恐れもあります。

これらのデメリットを軽減する手段は存在します。株式会社フォリウムのBPA(ビジネスプロセスオーグメンテーション)サービスは、従来のBPOが抱えるデメリットを効果的に解消します。​まず、業務整理(BPR)とロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を組み合わせることで、業務の可視化と自動化を推進し、外部パートナーとのコミュニケーションの複雑化を軽減します。​これにより、情報共有や意思決定プロセスの円滑化が図られます。​さらに、フォリウムは業務の標準化とマニュアル化を通じて、ノウハウを自社内にも蓄積する仕組みを提供しています。​これにより、外部依存度を低減し、自社内での知見不足のリスクを最小限に抑えることが可能です。​これらの取り組みにより、フォリウムはBPO導入時の課題を解決し、企業の持続的な成長を支援します。
>株式会社フォリウムの「BPOのデメリットを解消できる」BPAサービス

4:BPOとアウトソーシングの選び方:目的・コスト・リスクを見極めるポイント

企業がBPOとアウトソーシングのどちらを導入すべきかを検討するには、以下のポイントが参考になります。

1:業務内容とビジネス目標の一致
まず、自社が抱えている課題を明確にしましょう。企業全体の業務プロセスを抜本的に見直し、長期的な改善を目指すのか、それとも特定の業務だけを効率化すれば十分なのかで、選択肢は変わります

●BPOは、業務プロセス全体を改善し、戦略的に最適化したい場合に有効
●アウトソーシングは、特定の業務の負担を軽減し、即効性のある効率化を求める場合に有効

2:コスト対効果の分析
初期費用だけで判断せず、「どれだけ業務が効率化され、将来的にどれほどのコスト削減や利益向上につながるのか」を見極めることが大切です。

●BPOは業務プロセス全体を見直し、大きな変革が期待できます。ただし、導入には一定のコストがかかるため、長期的な視点での投資と考える必要があります
●アウトソーシングは比較的少ないコストで導入でき、リスクも低めです。しかし、改善できる範囲が限られるため、劇的な業務改革にはつながりにくい側面もあります

3:リスク管理とパートナー選定の重要性
BPOやアウトソーシングを成功させるには、委託先の選定が重要です。特に、以下のポイントをしっかり確認する必要があります。
●実績:過去の導入事例や、同業界での実績があるか
●セキュリティ体制:機密情報の管理やデータ保護の仕組みが整っているか
●コミュニケーション手段:意思疎通がスムーズにできる体制があるか

BPOは長期的なパートナーシップを前提とするため、委託先の選定を誤ると、期待した成果が得られないだけでなく、コミュニケーションの負担が増えたり、追加のトラブルが発生するリスクがあります。一方で、信頼できるパートナーと組めば、自社だけでは難しい業務改善をスピーディーに実現できるため、慎重に選ぶことが成功のカギとなります。

ここまでご紹介したように、BPOとアウトソーシングは、自社リソースを最適化する手段ですが、その役割は異なります。業務プロセス全体を見直し、長期的な改善を進めるBPOに対し、アウトソーシングは特定業務の効率化やコスト削減を目的とします。中小企業の場合は、まずアウトソーシングで負担を軽減し、事業拡大に応じてBPOを活用するという手もあります。いずれにせよ、成功にはパートナー選びが不可欠で、信頼できる企業と連携すれば、デメリットを抑えつつ業務改善を実現できます。

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