BPO市場の現在地と未来~そして、企業がうまく活用するためのヒントとは?

「業務の効率化を進めたい」「人手不足をどうにかしたい」――そんな課題を抱える企業が、いま注目しているのがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)です。国内外を問わず、市場は年々拡大しています。とはいえ、「本当に効果があるの?」「どう活用すればいい?」と悩む企業も多いのではないでしょうか。そこで、BPO市場の現状や今後の展望をわかりやすく解説し、企業が導入を成功させるためのポイントをご紹介します。
1:BPO市場の急激な成長 – 企業が今、導入を進める理由
●BPO市場の規模と成長率
最新の推計によると、世界におけるBPO市場規模は、2030年までに4,777億ドルに達すると見込まれています。この数字を裏付けるように、実際に日本国内でもBPOサービスの市場規模はかなり拡大しています。2023年度のBPOサービス全体(IT系BPOと非IT系BPOの合算値)の市場規模は、4兆8,849億2,000万円と推計。その内訳は、IT系BPO市場規模が前年度費5.9%増の2兆9,470億円、非IT系BPO市場規模が同1.0%増の1兆9,379億2,000万円にのぼっています(調査:矢野経済研究所)。
国内BPO市場規模推移・予測

企業が自社のコア業務に専念するために、あるいは業務効率化やコスト削減を目的にBPOサービスを導入するのは、国内外問わず共通の理由といえるでしょう。そこに加えて日本国内の場合は、人材不足・労働力不足という大きな要因が企業のBPOサービス導入を促進させています。前回のコラムでもご紹介したように、BPOサービスは従来のアウトソーシングのような単純な業務委託の範疇とは異なり、戦略立案やコンサルティングなど高度で専門的な外部委託を指します。今後、人材不足によって、企業はこのようなエキスパートの採用がどんどん難しくなることが予想されますが、この課題を解決できるBPOサービスはこれからも着実に成長していくことが考えられます。
●地域別の市場動向
世界規模で見た場合、北米地域ではITアウトソーシングやカスタマーサポートなど、BPOサービスの大きな市場となっています。アジア太平洋地域では、インドやフィリピンが英語力とコスト競争力という人材資源の点で注目されています。また、中国やベトナムなどもIT・通信領域において、BPO市場のさらなる成長が期待されています。
一方で、日本国内の場合は自治体向けBPO市場が伸びているという特徴があります。とりわけ地方自治体においては、人口減少に比例して職員数も減少しているものの、住民サービスについては多様化が進んでおり、これらの業務負担を軽減させるためのBPOサービスの利用が増えています。
●業界別BPO活用最前線
BPOは、多種多様な業界で導入が進んでいます。たとえば金融業界では、コールセンターやバックオフィスの事務処理に加え、年々厳しくなっているコンプライアンス対応やデータ解析といった専門性の高い業務もBPOに委託するケースが増えています。医療・ヘルスケア業界では、患者情報の管理や保険請求業務など、専門性と正確性を要する事務処理領域でアウトソーシングが活用される傾向があります。また製造業では、サプライチェーン管理や在庫管理など、スピードと効率が求められる業務を外部に委託し、生産性を高める動きも広がっています。
また、多くの業種に共通してニーズが高いのがデジタルBPOです。デジタルBPOとは、従来のBPOにデジタル技術を組み合わせることで、業務の効率化や自動化を進めるアウトソーシングの形態です。AI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、クラウド、データ分析などのテクノロジーを活用し、単なる業務委託にとどまらず、業務プロセスそのものを変革することを目的としています。
たとえば株式会社フォリウムでは、従来型BPOにBPR(業務整理)とRPA(ロボティクス)を加えた新しいBPAサービスをすでに展開しています。BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とは、企業の業務の流れを根本から見直し、より効率的で最適な形に再構築する取り組みです。まず、現場の業務を詳しく分析し、どの業務が会社にとって重要(コア業務)で、どの業務を外部に委託できるか(ノンコア業務)を整理します。そのうえで、業務のムダをなくし、品質を向上させるための改善策を提案し、作業時間の短縮や業務の効率化につながるよう、具体的なサポートを実施しています。
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●BPO市場における最新動向
BPO市場が拡大するなか、注目したい3つの主なトレンドがあります。
1.テクノロジーの進化とその影響
まず、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの先端技術の急速な普及です。従来の単純作業だけでなく、より高度な分析や判断が必要な業務にまでBPOで対応できるようになっています。チャットボットを活用したカスタマーサポートや、高度なデータ解析を伴うマーケティング業務などは、AI技術とBPOが組み合わさることで高い付加価値を生み出しています。
2.リモートワークとBPO
一部で廃止の動きも出てきていますが、人材確保のためにリモートワークを導入している企業は多いです。BPOサービスを提供する側も、遠隔でのサポート体制や、オンラインツールを活用したコミュニケーションやプロジェクト管理を進めています。海外や地方の拠点との連携もスムーズになっており、その結果、コスト削減に効果が出る事例もあります。リモートワーク環境に対応可能なBPOパートナーを選択する企業は今後も増えていくでしょう。
3.サステナビリティとBPO
環境に配慮した経営方針や社会的責任(CSR)を重視する企業が増える中、BPOサービスについてもグリーンエネルギーの活用やペーパーレス化の推進など、サステナビリティに配慮した取り組みが進んでいます。環境負荷の軽減のみならず、労働環境の改善や地域社会への貢献など、ステークホルダーとの関係強化につながる施策が評価され、企業がパートナーを選ぶ際の重要な基準となりつつあります。
2:BPO市場の未来
●AIと自動化の進化、そしてコンプライアンス強化の両立
かつてのBPOは人の手による業務代行が中心でした。しかし先ほどご紹介したように、今はAIやRPAを活用したデジタルBPOが主流となっています。あるオフィスの日常をとりあげると、カスタマーサポートではAIチャットボットが対応し、財務・経理業務ではRPAがデータ入力や請求処理を自動化するなど、業務のスピードと精度が飛躍的に向上しています。今後、AIの活用領域はさらに広がることが確実であり、より高度な業務もBPOにシフトしていくことが予想されます。
これと同時に、気を付けたいのが情報セキュリティやコンプライアンスの強化です。BPOは、企業の機密情報や個人データを外部に委託する性質上、データ保護やサイバーセキュリティリスクが高まる傾向にあります。日本国内の場合は、個人情報保護法に準拠した運用が必要ですが、今やどのビジネスにおいてもグローバリズムが広がっています。そのためGDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、国外の規制に適応する必要性が生まれるケースもあり、企業は情報セキュリティに詳しいBPO事業者を選ぶ必要性が、今後さらに高まるでしょう。
3:BPOを活用するうえで、外せないステップとは
●BPO導入のメリットとデメリットを、じっくりと検討する
BPOのメリット・デメリットについては、前回のコラムでもご紹介したように、自社の業務内容やビジネス目標、課題などによって、企業それぞれにメリット・デメリットが異なってきます。まずは一般的に挙げられるBPOのメリット・デメリットは以下になります。
<メリット>
・コスト削減:自社で人材を採用・育成するコストや設備投資を抑えられる。
・業務効率化:専門企業に委託することで、作業スピードや精度が向上。
・コア業務への集中:ルーチン業務を外部委託することで、戦略的な業務にリソースを集中できる。
・専門知識の活用:BPO企業の持つ専門性や最新技術を活用し、業務の質を向上。
・柔軟な対応が可能:繁忙期や事業拡大時にも、迅速に対応できる。
<デメリット>
・品質管理の難しさ:自社基準と異なる品質になる可能性があり、管理体制が求められる。
・情報セキュリティのリスク:機密情報の外部流出リスクがあるため、契約時の取り決めが重要。
・柔軟性の低下:委託先の対応範囲が決まっている場合、急な業務変更に対応しづらいことがある。
・コストがかかるケースも:長期契約やサービス範囲の拡大により、想定よりコストが増加することもある。
・自社ノウハウの喪失:業務を外部に委託し続けることで、社内に専門知識が蓄積されにくくなる。
●BPOパートナー選定の鍵は「誠実なコンサルティング力」
BPOサービスの事業者を選ぶ上で、まずは上記でご紹介した企業ごとのメリット・デメリットを、誠実に判断し伝えてくれる事業者を選ぶ必要があります。提供サービスの範囲、過去の実績、対応可能な業務領域、コストパフォーマンスなども、事業者選びのポイントに違いありませんが、まずは企業の課題を正しく把握し、具体的に指摘してくれる事業者を選ぶことです。
1.課題に対して、BPOを活用した適切な解決策を提案できる
汎用的なBPOサービスを押し付けるのではなく、「その企業にとって最適な形で業務プロセスを改善する方法」を提案できるかが、優れたBPO事業者の条件となります。
2.導入後の影響やリスクについても誠実に説明してくれる
BPOの導入にはメリットだけでなく、デメリットやリスクも伴います。そのため、導入後の業務運営にどのような影響があるのか、想定されるリスクにはどのようなものがあるのかを正直に伝え、適切な対策を提示できる事業者を選ぶことが大切です。
3.単発ではなく、中長期的な視点で企業の成長を支援する姿勢がある
BPOは一度導入すれば終わりではなく、業務環境の変化に応じて最適な形にアップデートしていく必要があります。そのため、契約後のフォローアップや改善提案を積極的に行い、企業とともに成長していく姿勢を持つ事業者を選ぶと、より良い関係を築くことができるでしょう。
企業文化や価値観の一致も考慮すべきポイントです。単なるコスト削減の視点だけでなく、長期的なパートナーシップを築ける企業かどうかを見極めることで、スムーズな業務遂行と持続的な成長が期待できます。